Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。
入澤ユカ
福士朋子の作品を見ながら、私は「雪の結晶」をおもいだしていた。
彼女はとびきりセンスがいい、そう思ったが、何のセンスがいいのかは、うまく言い表せなかった。しかしセンスがいい、という苦しみもあるだろうと同時に感じた。
生成り色のキャンバスに白、ブルー、わずかな黄色。ほぼ3色しか、色は現われてこない。隠すのが目的の修正液のような白は、ためらいがなく置かれる。濃いインクのようなブルーで描かれた線は、濃い色なのに惑いを見せる。
人はどんな順番で、線を描きはじめるのだろうか。最初の文字が物語を決定する予感を孕むように、画家の最初の線はなにを予感しているのだろうか。 問い詰めるように見てしまうことも鑑賞のかたちだが、感じるままに映ってくることもある。「雪の結晶」を想像した私も、もっと違うものも見たかった。寝転んで見る天井の木目模様にさまざまなかたちが現われてくるように、彼女の画面からは文字や図像が見えてくるような気がした。空耳という現象は音の記憶から起きるが、空目という何かが見えた気がする現象もある。
私は、なんらかの理由で消されていったであろう福士朋子のかたちを勝手に想像しはじめた。そうおもった瞬間にもう目の前に、おどけたような図像が現われた、ほんとだよ。それは「サーカスのぶらんこ乗り」図だった。
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