川越里美 展 ―棘と羽をもつ陶体― 会期=2005年6月3日(金)〜7月4日(月) |
川越さんの作品は、直径3mm程の細い棒状の磁土を、支持体が見えないほどびっしりと、ヤマアラシの棘のように立てて、かたちづくる球体や卵型の立体です。 1点は40cmほどの大きさで、棒はコバルトブルーに釉掛けされ、切り揃えられた白い口との対比が、海中生物のように鮮やかです。1本1本の陰影や付ける角度によって、海流に踊る珊瑚や、草原に広がる風紋のような躍動感が走ります。棒の長さが長いほど表面では間隔が開き、花火の光や噴水の水の広がりのような煌きがあります。また、棒が短く表面の密度が濃いほど、針やウニや栗のイガに似た、鋭さや刺すような強さがあります。 深緑色のものもあり、部分的に短く切り揃えられた面が断層のように広がっていて、鉱石のマラカイトのような硬質で艶やかなイメージです。 川越さんは陶芸を始めて10年ほどになります。初期より、水を入れた水槽に小さなやきものの玉をいくつか浮かべ、水槽をシーソーのように動かして見せる作品などで、やきものの重さのイメージを変容させようと試みてきました。 花のかたちをつくるときも、陶板状に抽象化した淡いピンク色の花びらを1枚1枚並べ立て、土ならではの柔らかくて、ほっこりとした優しい雰囲気を表現します。こうしたかたちは、プロダクトデザインやグラフィックデザインなどではよく見かけるスタイルですが、プラスティックやアクリルなどの合成素材にはない、土のしなやかさ、滑らかで粘り気のある質感が独特です。モチーフを自然に求め、細かな土のパーツを集積してつくることで、風にそよぐ軽やかさや、尺取虫の動きのようなムーブメントが生まれています。ブルーとホワイトの対比には、海中にいるような清々しい鮮烈さと、白磁の冷やかなる力強さがあります。 すでに関西では受賞を重ねている作家ですが、今展が東京で初めての個展開催となります。 |
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