gallery2

INAXギャラリー特別企画展
10days セレクション
- 予兆のかたち 6 -
矢部真知己 展

会期 : 2004年8月2日(月)〜8月16日(月)  
休廊日 : 日祝日、8月11-15日

SCOPE 展

会期 : 2004年8月19日(木)〜28日(土)
休廊日 :8月22日

Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。

矢部真知己の具象

具象形態にひきこまれる感覚は、旅に似ている。予測しながら予想外の豊饒が目の前にあらわれたときに興奮する。旅と美術を見ることは似ている。私的な時間に選んで見に行くのは、古い時代の文物や山水画、仏像、仏画、障壁画や絵巻だが、ある日そのことは、タイムトリップという旅だと思った。その鑑賞という旅に陶然とし、時おり茫然とすることがあるのは、いまの時代の人物文物、静物や風景を埒外におしやっている不可思議な性向がじぶんにあることを自覚するときだった。
矢部真知己の絵画にであった。既視の記憶に飛び火しておこった不意の大火のように見ることが弾み、熱帯色に彩られた動物たちの画面が迫ってきた。
大画面に輪郭と色彩が滲むように溶けあったライオン、ゴリラ、シマウマ、サイ、あるいはリャマやガゼルが、遠近大小自在に描かれている。キャンバスに筆や絵具で動物というモチーフを思いのままに描いている画家を想像してみた。絵画の、視覚の愉楽。祝祭的な動物の群像が伝える視覚の悦ばしさに身をまかせてみる。矢部のモチーフと一体化した、絵を描くという好ましいエネルギーに感染する。
矢部真知己の動物たちは、真夏の夜の花火のように、目にも耳にも鼻腔にまで愉楽を残し、記憶される。

入澤ユカ
(INAXギャラリーチーフディレクター)


SCOPEの具象

「SCOPE」は筑波大学芸術学の講師である橋本典久と、学生の稲葉剛、植村啓市、玉置淳の4人によるユニットである。橋本は2003年11月、INAXギャラリー2で「プライベート・パノラマ」というタイトルで個展をした。その際個人の制作とユニット制作の作品があること知った。それが「巨大昆虫」。
実物の昆虫を直接スキャナーでスキャンしてコンピュータに取り込み、インクジェットでにんげん大に出力する。これこそ具象、真正面の具象のかたちだった。昆虫が未体験の感覚をつれて大波のようにやってきた。にんげん大は昆虫なのに昆虫ではない。たった一匹のトンボがイナゴが、にんげん大になってやってきて、はじめてこみあげてくる森羅万象があった。にんげん大の私は、狂おしく美しくふしぎなもののほとんどに未知未見のまま、幾億兆の何かに、少しだけふれて消えゆくものだったことを、にんげん大の昆虫によって知らされた。トンボやセミ、イナゴやクワガタのうぶ毛や透きとおる羽や触角のかたちがにんげん大になってあることで、あたまと眼の尺度が壊れて消えた。
「SCOPE」は、スキャナーという装置でスキャンするという行為で、見るという行為にあたらしい感覚の領域をひらいた。ここにいる昆虫は感覚に作用し、未体験のトリップをおこす新種の、原種としてお目見えする。

入澤ユカ
(INAXギャラリーチーフディレクター)



INAXギャラリー2 2004年の展覧会

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